プラザくん2023年4月17日11.指折りたし算・引き算①小学校の授業もそろそろ本格的に始まった頃でしょうか。四谷大塚のジュニア予習シリーズでは、1年生も2年生もたし算やひき算の学習がすでに始まっていますが、保護者の方々からのお声でよく耳にするのが、「指で数えて計算しているようですが、大丈夫でしょうか?」といった類のご質問です。結論だけを言えば、「大丈夫」の一言で終わってしまいますが、同年代の他のお子さんやご兄弟の中での比較など、否が応でもお子さんの理解力や成長度合いを心配されるのもごもっともだと思います。そこで、今回は「指折りたし算・ひき算」の是非について掘り下げてみたいと思いますが、まずは、「たし算」から始めてみましょう。小学3年生のお子さんに「たし算って何?」という質問を投げてみると、結構な割合で「たすこと」という答えが返ってきます。すでにたし算が当たり前になっているお子さんからすれば、「たし算=たすこと」で何も困ることはないでしょうが、「たすこと」をもう少し詳しく説明できるお子さんはあまり多くいらっしゃらないのが現状です。実はたし算にはいくつか意味があって、 ①初めにあるものからどれだけ増えたか? ②複数あるものを合わせるといくつか?といったところが典型的なパターンでしょうか。ちなみに②の複数あるものが同じものに変わると「かけ算」の導入に使われる考え方になります。「桁数が少ない低学年のたし算なんて、答えが出せればいいでしょう。」というお声も聞こえてきそうですが、先々文章題でつまずくお子さんたちの共通点として、文章から数量の変化が読み取れていないという傾向が多く見受けられます。できれば、内容が難しくないからこそ、しっかりとした理解を身につけさせてあげることが将来的にとても大切になってくるように感じます。そこで、お子さんたちが「たすこと」を理解していくプロセスについて少し考えてみましょう。例えば、就学前のお子さんに「袋の中に入っているお菓子はいくつあるかな?」と聞いてみると、無邪気に「いち・に・さん・よん…」と数えたりしますよね。この行動は実体のあるものを手に取って数えていくというリアルな感覚を持った数え方です。おそらく、「たし算」という概念がない自然な行動ですので、「うちの子1つずつ数えてるけど大丈夫かしら…」という保護者の方はあまりいらっしゃらないかと思います。では、同じぐらいお菓子が入っている袋をもう1つ渡して、「こっちの袋も合わせるといくつ?」と聞いてみた場合はどうでしょうか。もしかすると、A…1つ目の袋の続きから数えるお子さんと、B…1つ目の袋からもう一度数え始めるお子さんに分かれるかもしれません。どちらの行動を取ったとしてもまったく問題はありませんが、Aのお子さんの行動は、1つ目の袋のお菓子を数字に置き換えて、その続きの数から数え始めるというプロセスをたどることができています。これがたし算の意味①初めにあるものからどれだけ増えたか?という考え方に近いかと思います。もし仮に、1つ目の袋と2つ目の袋を別々に数えて合わせることができれば、たし算の意味②複数あるものを合わせるといくつか?の考え方と言えるでしょう。お子さんたちがたし算の意味を理解していく過程には、いくつもの乗り越えなければいけない壁があります。 ①数のならび方(増え方)を知る。 ②手に取って数えられるものを数値化する。 ③数値化したものを式に表す。 ④たし算をする。今回のテーマである「指折りたし算」は上記①~④のどのプロセスになるかお分かりでしょうか?おそらく、②と③は見よう見まねで何度かやるうちに覚えていくことですが、肝心の④になると、結局1つずつ数えるという工程に戻ってしまっているのではないでしょうか。別の言い方をすれば、答えを出す前に指折り数えた方が正確だという考えが、お子さんの中に残っていると言えるかもしれません。つまり、指折り数えることは、本人からすると面倒でも正確に答えを導くための方法ですので、「指折りたし算」を無理やり克服させる必要はまったくありません。むしろ、その方法を否定してしまうと、本人には確信のある方法がなくなってしまいますので、答えに自信が持てなかったり、そもそも算数への意欲がなくなったりというような逆効果になりかねません。「指折りたし算」をしているお子さんに必要なことがあるとすれば、数の概念を身につけることかもしれませんが、これは勉強というよりは、身近な実体験として知っていくことや心身の成長に伴い身についていくことに近いでしょうから、当然のことながら個人差があります。ただ、小学5年生になっても「指折りたし算」をしている子がいるかと言えば、ほとんどいないのが現状ですのでご安心ください。いずれ指の本数が足りなくなってきますし、分数や小数が入ってくるとそもそも指では表現しづらくなってきますから。今回は「指折りたし算」のことについて掘り下げてみました。手に取って数えていたものを数字に置き換え、立式をして数字でたし算をするということには、大人が想像する以上にいくつものハードルがあるということをお伝えできていれば幸いです。次回は、たし算とはまた少し訳が違う「指折りひき算」についてお伝えしていきます。
小学校の授業もそろそろ本格的に始まった頃でしょうか。四谷大塚のジュニア予習シリーズでは、1年生も2年生もたし算やひき算の学習がすでに始まっていますが、保護者の方々からのお声でよく耳にするのが、「指で数えて計算しているようですが、大丈夫でしょうか?」といった類のご質問です。結論だけを言えば、「大丈夫」の一言で終わってしまいますが、同年代の他のお子さんやご兄弟の中での比較など、否が応でもお子さんの理解力や成長度合いを心配されるのもごもっともだと思います。そこで、今回は「指折りたし算・ひき算」の是非について掘り下げてみたいと思いますが、まずは、「たし算」から始めてみましょう。小学3年生のお子さんに「たし算って何?」という質問を投げてみると、結構な割合で「たすこと」という答えが返ってきます。すでにたし算が当たり前になっているお子さんからすれば、「たし算=たすこと」で何も困ることはないでしょうが、「たすこと」をもう少し詳しく説明できるお子さんはあまり多くいらっしゃらないのが現状です。実はたし算にはいくつか意味があって、 ①初めにあるものからどれだけ増えたか? ②複数あるものを合わせるといくつか?といったところが典型的なパターンでしょうか。ちなみに②の複数あるものが同じものに変わると「かけ算」の導入に使われる考え方になります。「桁数が少ない低学年のたし算なんて、答えが出せればいいでしょう。」というお声も聞こえてきそうですが、先々文章題でつまずくお子さんたちの共通点として、文章から数量の変化が読み取れていないという傾向が多く見受けられます。できれば、内容が難しくないからこそ、しっかりとした理解を身につけさせてあげることが将来的にとても大切になってくるように感じます。そこで、お子さんたちが「たすこと」を理解していくプロセスについて少し考えてみましょう。例えば、就学前のお子さんに「袋の中に入っているお菓子はいくつあるかな?」と聞いてみると、無邪気に「いち・に・さん・よん…」と数えたりしますよね。この行動は実体のあるものを手に取って数えていくというリアルな感覚を持った数え方です。おそらく、「たし算」という概念がない自然な行動ですので、「うちの子1つずつ数えてるけど大丈夫かしら…」という保護者の方はあまりいらっしゃらないかと思います。では、同じぐらいお菓子が入っている袋をもう1つ渡して、「こっちの袋も合わせるといくつ?」と聞いてみた場合はどうでしょうか。もしかすると、A…1つ目の袋の続きから数えるお子さんと、B…1つ目の袋からもう一度数え始めるお子さんに分かれるかもしれません。どちらの行動を取ったとしてもまったく問題はありませんが、Aのお子さんの行動は、1つ目の袋のお菓子を数字に置き換えて、その続きの数から数え始めるというプロセスをたどることができています。これがたし算の意味①初めにあるものからどれだけ増えたか?という考え方に近いかと思います。もし仮に、1つ目の袋と2つ目の袋を別々に数えて合わせることができれば、たし算の意味②複数あるものを合わせるといくつか?の考え方と言えるでしょう。お子さんたちがたし算の意味を理解していく過程には、いくつもの乗り越えなければいけない壁があります。 ①数のならび方(増え方)を知る。 ②手に取って数えられるものを数値化する。 ③数値化したものを式に表す。 ④たし算をする。今回のテーマである「指折りたし算」は上記①~④のどのプロセスになるかお分かりでしょうか?おそらく、②と③は見よう見まねで何度かやるうちに覚えていくことですが、肝心の④になると、結局1つずつ数えるという工程に戻ってしまっているのではないでしょうか。別の言い方をすれば、答えを出す前に指折り数えた方が正確だという考えが、お子さんの中に残っていると言えるかもしれません。つまり、指折り数えることは、本人からすると面倒でも正確に答えを導くための方法ですので、「指折りたし算」を無理やり克服させる必要はまったくありません。むしろ、その方法を否定してしまうと、本人には確信のある方法がなくなってしまいますので、答えに自信が持てなかったり、そもそも算数への意欲がなくなったりというような逆効果になりかねません。「指折りたし算」をしているお子さんに必要なことがあるとすれば、数の概念を身につけることかもしれませんが、これは勉強というよりは、身近な実体験として知っていくことや心身の成長に伴い身についていくことに近いでしょうから、当然のことながら個人差があります。ただ、小学5年生になっても「指折りたし算」をしている子がいるかと言えば、ほとんどいないのが現状ですのでご安心ください。いずれ指の本数が足りなくなってきますし、分数や小数が入ってくるとそもそも指では表現しづらくなってきますから。今回は「指折りたし算」のことについて掘り下げてみました。手に取って数えていたものを数字に置き換え、立式をして数字でたし算をするということには、大人が想像する以上にいくつものハードルがあるということをお伝えできていれば幸いです。次回は、たし算とはまた少し訳が違う「指折りひき算」についてお伝えしていきます。